HOME > MATERIALS > クラスタ爆弾 > ICBLがCCW見直しに臨む姿勢


ICBLがCCW見直しに臨む姿勢

スティーブ・グース (ヒューマン・ライツ・ウォッチ 1999年10月20日)

はじめに

 CCW(特定通常兵器使用禁止・制限条約)第二議定書に関する第一回の中間会議が1999年12月15日〜17日に開かれる。また2001年のCCW再検討会議の準備会合が2000年と 2001年に開かれる。これらの日程はまだ未定である。

 この覚え書きは、CCWに関するICBLの活動のために、諸選択肢についてもう一度考え、勧告をまとめることを目的としている。この覚え書きをたたき台にして議論し、ジュネーブで各国代表やプレスに配るのに使うICBLのCCWに対する態度表明文の草案を書くつもりである。

 まず何よりも最初に、何について提起し、どんな立場をとるのかについて考えなければならない。中心に据えられるべき問いは、(1)我々は対人地雷に関することで何をしたいのか、(2)我々は対車両地雷についても取り組みたいのか、ということであろう。また、どこまで深く関わるのか、いかに提言活動を進めるのか、そしてICBLの活動全般についても見ていく必要がある。中間会議の議題の大半はアメリカ合衆国が設定すると思われるが、次のようなことを考えているらしい。

1)対車両地雷について:まず第一に探知可能なものにすること。第二に撒布される対車両地雷については自己破壊装置、あるいは自己中和装置ないしは自己機能停止装置を付けること。

2)対人地雷について:まず信頼性を高めるための明細を定めること(自己破壊装置が90〜95%は機能し、自己機能停止装置が99.9%〜99.99%は機能すること)。次にそれらが作動するまでの期間を短くすること。

3)射程:国家間紛争や内戦だけでなくあらゆる状況において拘束力を持たせること。

4)罰則規定:1996年にアメリカ合衆国やフランスが提案していたもの、あるいはオタワ条約に近いものに。

 合衆国政府や、私が話をした幾つかのオタワ条約締約国政府によれば、これらの他には特に議案が出される見込みはない。

論点と我々の立場

1.対人地雷について

A.基本姿勢

 CCW第二議定書の中間会議については、大体において前回と同様に対応すべきだろう。すなわち、そこで出される議案に対処していくのではなく、我々自身の論点を堅持するのである。我々は包括的な禁止と、オタワ条約の普遍化を求めている。その鍵となる標的の国々の大半がCCWの会議には出席する(アメリカ、ロシア、中国、インド、パキスタン、イスラエル、エジプト)。我々はそこに出かけていく必要があり、CCWの規制ではなく、オタワ条約の禁止に賛同するよう働きかけなければならない。前回と同様に、よりよい技術的必要条件の設定を積極的に支持するのではなく、なぜ技術的な対応ではうまくいかないかということに再度焦点を当てる必要があると考える。

 各国政府に対しても、マスメディアに対しても、CCWによるアプローチは飛び越えられたのだと、いわばもう世界の残りの国々からはその有効性は信じられていないのだと、繰り返し強調する必要がある。新たな国際社会の規範が姿を現しているのであり、CCWに固執する国々はその規範に照らして「ならずもの」達なのである。

 私としては、各国政府に、CCW第二議定書の改正をオタワ条約の文脈で考えてもらいたいのだ。1996年の頃と違い、今は全ての国々が包括的な禁止が望ましいことに実質的に同意している(口先だけの国もあるだろうが)。それゆえ、第二議定書の改正で、よりオタワ条約に内容を近づけること、オタワ条約と首尾一貫するものにすることを目的とするのは筋が通った話である。それが具体的にどうすべきであるということかはこれから明確にしていく必要がある。

 当然のことながら、会議場の通路や個別のミーティングで (個々の国へのロビイングで)全面禁止に近づくような種々の決意表明をするよう働きかけていくのはよいことだ。対人地雷の生産や輸出の禁止あるいは一時停止、保有地雷の破壊、使用の規制(自己破壊装置をつけていないものは使わない、国境付近でしか使わない、内戦では使わない等)、透明性の確保など。

B.対人地雷の定義

 選択肢:(1)CCW自体にもう意味がないということで、何もしない。「本来の目的として(primarily)」という言葉についても問題にしない。(2)「本来の目的として(primarily)」という言葉を定義から取り除いて、オタワ条約の定義と合致させる。(3)除去処理防止装置付き対車両地雷が抜け穴とならないように変更して、オタワ条約の定義と合致させる。(4)使われた際の効果に基づく定義にするよう変更を求める。

 現実的に考えると、実現しうるのは(2)であろう。それさえもほとんど不可能と思われる。だが、(3)(4)についても、提言活動はすべきだと思う。2004年のオタワ条約改正における実現を目指して、オタワ条約支持国に働きかけを開始するという意味で活動する価値があるだろう。CCWの定義をオタワ条約に合致するものにしようとする国が出てくるかどうかは分からない。

C.委譲の禁止

D.射程

 ICBLは、1995/96年のCCWで、「あらゆる状況における適用」を求めた。オタワ条約では、この主張を通すことができた。今回の中間会議でも、このことは主張していきたい。

E.罰則規定

 我々は前回の中間会議では、第二議定書の条約の遵守に関する相互検証と罰則の仕組みについて問題提起した。オタワプロセスでは罰則規定の草案をICBLで起こしたが、第8条として結実したものは最初に望んだほど厳格な規定にはならなかった。条約作成の過程で議論が進んだ結果として、我々の多くが現地査察という考え方から離れたためである。今度の中間会議でも、オタワ条約と同様な規定にすることを求めることになると思うが、同じ内容を求めるのか、それ以上の内容を求めるのか、話し合っておく必要がある。

F.その他について

*報告義務について:第二議定書の報告義務はオタワ条約よりも範囲が限定されている。この点について改善を求めることができるだろう。また、市民がその報告を手にできるように求める必要もある。年次会合の前に、報告が締約国の間で回覧される必要もある。

*移行・猶予期間について:条約遵守に必要な措置をとるための9年間という移行・猶予期間について、短縮を求めることもできるだろう。まず、無理とは思われるが。個々の締約国に、この規定を最大限に活かしたりしないよう働きかけていくべきだろう。

* 包括的禁止に関する条約の文言について:会議の開会または閉会における宣言の中で追求できるだろう。

* 敵対行為における例外規定:敵対行為があってそれが不可能な場合は、自己破壊装置がついていない対人地雷のマーキング、監視、除去をする必要がないという規定があるが、この抜け穴規定を削除するよう求めることができるだろう。

2.対車両地雷について

 最初に問われるのは、このCCW見直しにあたって、ICBLが対車両地雷に関する何らかの立場をとるべきかどうかということである。これはクラスター爆弾の場合と共通するところがある議論である。ICBLは唯一対人地雷のみを対象とするキャンペーンであるというこれまでの方針を捨てることになるというのが反対側の第一の論拠である。これまで我々は対戦車地雷は問題にしていないと言明してきたのだ。対戦車地雷が市民に脅威を与えるものであり、禁止または制限できれば、大きな人道上の効果が期待できる、というのが賛成側の論拠である。ICBLが対車両地雷について働きかけをするとしたら、禁止を呼びかけるべきだろうか?制限を求めるべきだろうか?ICBLのメンバーの意見が一致することはないだろう。ドイツのキャンペーンが常に主張してきたように対車両地雷についても全面禁止を呼びかけることも、探知不可能な対車両地雷の禁止を求めることもできるだろう。自己破壊/自己中和/自己機能停止装置がついていない対車両地雷の禁止を求めること、技術上の、あるいは使用上の制限を求めることもできるだろう。私は、ICBLは市民への被害を少なくするあらゆる手段を支持するという一般論を述べるに留め、対車両地雷についてはいかなる立場も取るべきでないと考える。個々のNGOとして、あるいは個々の国のキャンペーンとして、対車両地雷の禁止あるいは制限を積極的に呼びかけていくべきである。

3.処理防止装置について

 処理防止のための装置つき対車両地雷についてCCWを利用して問題提起すべきである。声明文、実状分析を出し、処理防止装置つき対車両地雷に関する情報公開と透明性の確保を求めることができるだろう。だが、条約の枠組みの中で何ができるだろうか?対人地雷の定義を変更するのも一つのやり方である。処理防止装置そのものの禁止を求めてもよいだろう。

*編注:ICBLはオタワ条約の対人地雷の定義(p.17参照)にある処理防止装置(Anti-handling device)を、1997年のオスロ会議での議論に基づき、「対車両地雷を守るための装置で、その地雷の一部分を構成するもの、連結されているもの、またはその地雷の下に置かれているものであり、意図的に解体しようとしたり、触ったりしたときに作動するもの」と解釈している。すなわち、意図せずして起爆してしまうような地雷は対人地雷であり、オタワ条約によって禁止されていると理解している。しかし、このことを認識している締約国はあまりなく、どのタイプが禁止されるべきか明確にされていない。ICBLのウェブサイトにHRWによる現状分析が掲載されている。

4.どこまで参加するのか?

 CCWはオタワ条約によって乗り越えられ、もう無意味だから、またはどうせ成果が期待できないのだから、このことで労力を費やすべきでないという主張もあるだろう。だが我々は、CCW再検討会議やその準備会合にできる限り関わり、姿を見せるべきである。詰まるところ、CCWに出てくる国々はオタワ条約の普遍化を進めるための標的になっている国々なのだ。CCWには各国の対人地雷に関する専門家が都合よく一箇所に集まってくれるのだ。オタワ条約に頑固に抵抗している国々に、我々がまだ存在していること、これまでと同様に厳しく追及し続けることを示したいのだ。

 CCWにおける対人地雷移譲の制限を包括的なものにするように求めるべきだろうか?一時はアメリカ合衆国がこれを追求するかと思われたが、そうしないことにしたようである。オタワ条約の締約国でこの方向に関心を示しているところもある(編注:日本など)。移譲を禁止する条約作りを各国が主張するのならば、それは国連軍縮会議(CD)ではなく、CCWで検討すべきだ。だが、そのような新たな条約作りはそもそも望ましくない。オタワ条約で我々が創りつつある規範を揺るがすことになるからである。ICBLはCCWによる移譲の禁止を推奨せず、もしそういう提案をする国が出てきたときには積極的な反対も支持もしない方針をとるべきだろう。この新たな条約作りが避けられないのならば、オタワ条約締約国によって提案されるのでなく、非締約国、例えばインドによって提案されることに期待したい。国連軍縮会議でも対人地雷の移譲禁止を求めていたICBLのメンバーは、今回のCCWでもそれを積極的に支持するだろう。包括的な禁止ではなく、移譲に関する規定の強化を求める国もあるだろう。それもまた我々が取りうる選択肢である。

 実際のところ、この12月にたくさんのICBLのメンバーがジュネーブに集うことは難しいかもしれない。だが可能な限り出席して欲しい。特にオタワ条約に反対している国のキャンペーンにはぜひ参加して欲しい。残念ながら、そのためのファンドを集めたり、戦略を立てるための時間は足りないだろう。 2000年、2001年に開かれるCCW再検討会議のための準備会合は大きなイベントにしたいものである。悪者たちに恥をかかせる絶好の機会ではないか!…いや、つまり、手強い国々を建設的な形で巻き込んでいこうではないか!

(翻訳:東京YMCA真野玄範)

ICBL and the CCW : MEMO for ICBL CC and Treaty Working Group